パワーエレクトロニクス製造における課題解決

パワーエレクトロニクスは、技術の進歩やエネルギー効率に対する需要の高まり、再生可能エネルギーへのシフトにより、急速に発展している分野です。その一方で、信頼性や耐久性の向上、小型化への対応といった新たな技術的課題も浮上しています。
こうした課題に対し、プラズマトリートの表面処理技術は、酸化膜や微細な汚染物質の除去、さらに表面活性化による濡れ性 (接着性) の改善を実現し、製造プロセスの効率化と製品品質の向上に貢献します。

信頼性と長寿命を実現する高度な表面処理

パワーエレクトロニクスの分野では、小型化と高性能化の進展に伴い、さまざまな技術課題が顕在化しています。特に、1,000Aを超える大電流を制御するパワーエレクトロニクスでは、信頼性と長寿命の確保が重要なテーマです。
そのためには、使用されている多様な材料をシームレスに統合する高度な技術が求められます。しかし、金属表面の酸化や隙間といった欠陥は、性能や安全性を低下させるだけでなく、全体的な信頼性にも悪影響を及ぼす可能性があります。

こうした課題に対し、プラズマトリートはOpenair-Plasma®(オープンエアープラズマ) による洗浄・活性化と、効果的な酸化膜除去を可能にする新たなソリューション、REDOX®ツールを提供します。
これらの技術により、酸化物のない清浄な表面を確保することで、優れた接着性と安定した電気性能を実現できます。その結果、コンポーネント全体の信頼性が向上し、次世代の高性能エレクトロニクス製品の製造・開発に貢献します。

半導体・パワーモジュール製造における課題


材料と接合部に対する厳しい要求

高性能パワーモジュールは、過酷な条件下でも長期間にわたり安定して動作することが求められます。電気自動車、風力発電、産業用ドライブなど、さまざまな用途で使用されるこれらの部品は、高温・高電圧・強い機械的ストレスにさらされながら、ますます小型化が進む設計に対応しなければなりません。

特に課題となるのが、銅・セラミック・ポッティング材などの異なる材料が交わる「異材界面部 (トリプルポイント)」です。これらの領域は応力集中や気泡、接着不良が生じやすく、モジュール寿命を縮める要因となります。
その主な原因のひとつが、はんだ付け性を損ない、接触抵抗を増加させる金属表面の酸化です。さらに、オーバーモールディング工程におけるエポキシ樹脂の剥離も大きなリスク要因のひとつです。
これらの問題を解決するには、信頼性の高い接続技術と適切な表面処理が不可欠です。

コンサルティングと資料

当社のOpenair-Plasma®テクノロジーが、エレクトロニクス製造のプロセスをどのように強化できるかをご紹介しています。

資料をダウンロードして、詳細な事例をご覧ください。

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多様な産業分野に広がるプラズマ技術の応用

当社のプラズマシステムは、電動モビリティ、再生可能エネルギー、産業オートメーションなど、多様な産業分野で活用されています。こうした分野のパワーモジュールは、高温・高電圧・強い機械的ストレスに耐えつつ、長期的な信頼性を維持する必要があります。その課題に応える共通の解決策が、Openair-Plasma®およびPlasmaPlus®(プラズマプラス) による高度な表面処理技術です。

電動モビリティ (EV/FCV)
インバータ、バッテリーマネジメントシステム (BMS)、充電ユニットにおいて、プラズマ処理は安定した電気接点を確保し、強い発熱や大電流が加わるダイナミックな環境でも層間剥離を抑制します。

再生可能エネルギー (太陽光・風力発電)
太陽光発電や風力発電システムでは、紫外線や湿気、温度変化にさらされながらも長期の耐久性が求められます。
プラズマコーティングは重要な接触部を保護し、システム全体の信頼性を高めます。

産業オートメーション (産業機器・ロボットシステム)
産業機器やロボットシステムに搭載されるパワーモジュールは、振動や粉塵、厳しい使用環境に耐える必要があります。
プラズマ処理はポッティング材の密着性を向上させ、長期間にわたり高い信頼性を持つ接続を実現します。

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主な課題と影響:

はんだ接合部のボイド

  • 熱的・電気的インピーダンス:ボイドははんだ接合部の熱伝導性と電気伝導性を低下させ、ホットスポットや抵抗増加を招き、過熱による故障につながります。
  • 機械的強度の低下:ボイドは接合部の機械的信頼性を損ない、熱的・機械的ストレス下でクラックや破損を誘発します。
     

金属表面の酸化

  • 接着不良:酸化膜により材料間の接着が妨げられ、層間剥離や組立部品の機械的強度の低下を引き起こします。
  • 不均一なはんだ付け:酸化膜がはんだ付け性に影響し、接合部の密着性を低下させます。
     

材料の適合性

  • 熱膨張係数の不一致:材料ごとに熱膨張係数は異なります。適切な表面処理や接着技術がなければ、熱サイクルによって応力が蓄積し、剥離やクラックの原因となります。
  • 化学的不適合:化学反応による性能低下や故障を防ぐため、材料を慎重に選択し、適切な表面処理を行う必要があります。

フラックス残渣

  • 汚染:フラックス残渣が電気ショートや腐食を引き起こし、信頼性の低下につながる可能性があります。
  • 洗浄の課題:部品が小型化・高密度化するにつれて、部品を損傷せずにフラックス残渣を除去することがますます困難になっています。
     

小型化

  • 精度要件: 部品の小型化や微細ピッチ化により、極めて高い精度の製造プロセスが求められます。わずかな欠陥でも重大な性能低下や故障につながる可能性があります。
  • 放熱:部品のサイズが小さくなるにつれて放熱が難しくなり、高品質なはんだ接合と材料による効果的な熱管理が求められます。
     

長期信頼性

  • 過酷な環境条件:パワーエレクトロニクスは、高温、湿度、振動などの過酷な環境にさらされるため、材料や接合部にボイドや欠陥を残さないことが長期信頼性の維持に不可欠です。
  • 経年劣化:時間の経過とともに材料は劣化し、接合部も弱くなります。ボイドや欠陥はこの劣化を加速させ、早期故障につながります。

Openair-Plasma®を活用したプラズマトリートの課題解決ソリューション

接着性とボンディング信頼性の向上

焼結プロセスでは部品が高温にさらされるため、層間剥離のリスクが発生する可能性があります。
プラズマトリートは、まずREDOX®ツールを用いて酸化膜を効果的に除去し、その後PlasmaPlus®による接着促進ナノコーティング層を形成することで封止樹脂との確実な接着を実現する、総合的なソリューションを提供しています。これにより、接合信頼性が大幅に向上します。

REDOX®ツールによる酸化膜除去

REDOX®ツールは、窒素と水素を組み合わせた還元ガスを用い、トンネル構造内で基材の処理を行います。この手法により、後続工程に最適な清浄表面が得られます。
酸化膜を除去することで電気伝導性と信頼性が向上し、パワーモジュールやIGBTなどの高性能な電子部品において重要な役割を果たします。

連続インライン処理による効率的な生産

REDOX®ツールは連続インライン処理に対応し、生産ラインを流れる基材を効率的に処理できます。この仕組みにより停止時間が短縮され、製造全体のスループットが向上します。
さらに、部品ごとに一貫した条件で処理されるよう制御されるため、品質と性能の均一性が確保されます。

欠陥低減と歩留まり向上

徹底した洗浄と酸化膜除去によって、ボイドやその他の欠陥リスクを最小化し、パワーエレクトロニクスの長期信頼性と性能を大幅に向上させます。
清浄な表面と改善された接合により欠陥や手直しが減少し、歩留まりの向上と生産廃棄物の削減につながります。

環境負荷低減とコストメリット

プラズマトリートのソリューションは、フラックスや洗浄剤への依存を最小限に抑えることで、製造プロセスの環境負荷を大幅に低減します。
加えて、プロセス効率の改善、歩留まりの向上、消耗品使用量の削減により、長期的なコスト削減を実現します。